技術屋 vs 非エンジニア とチャレンジャー号

数日前に風邪を引いたらしくついには昨日ダウン、会社を休んでしまった。どうも子供の頃から体が弱い。
となると、集中する作業は出来ないが何もしないのも暇なので適当にネットを漁っていると、チャレンジャー号と技術倫理についての情報に行き着いた。


チャレンジャー号の爆発事故は1986年1月28日に起きた事故だ。自分が小学生の時の話で未だによく覚えている。
これより前にもロケット打ち上げがあったが、この時期は久々に中継をするということで結構楽しみだった記憶がある。
が、度重なる延期にうんざりしていてやっと打ち上げが始まったとワクワクしつつ見ていると、打ち上げ直後からなんか変な雰囲気、そしてすぐに爆発。
結構ショックだったのを覚えている。
まあ、それでも当時はそれであー、となってまた日常に戻っていって終わりだったのですが。


そして、今回知ったのは、事前にこの事故が起きるのではと危ぶんでいた技術者達がいた事、そして彼らが未然に防ごうと動き上層部にも訴えたが、最終的には政治が優先されたこと。
悲しいことに自分はバカなので大学でもこういった授業はなかったが、海外だとこの事例を扱った書籍が技術者になるための必読書にもなっているらしい。

そもそもスペースシャトルとは?

まあなんとなくは知っていたし、それで良いのだけどまあ復習。


宇宙へロケットを打ち上げるには膨大な金がかかる。
スペースシャトルの前は毎回1からロケットを作る。宇宙に言って帰ってくればそれで使い捨てで終わり。
で、その膨大なお金を減らすべく、再利用ができるロケットを目的にしたのがスペースシャトル


さて、Wikipediaによると実際には高い買い物だったらしい。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%88%E3%83%AB#.E7.94.98.E3.81.99.E3.81.8E.E3.81.9F.E4.BA.88.E6.B8.AC.E3.81.A8.E8.86.A8.E3.82.89.E3.82.93.E3.81.A0.E8.B2.BB.E7.94.A8.E3.81.A8.E5.8D.B1.E9.99.BA.E6.80.A7

スペースシャトルの最終飛行も終了し総決算の計算をすると、135回の打ち上げで2090億ドルもの費用がかかってしまっていた。一回の飛行当たり、通常の使い捨て型ロケットを打ち上げるよりも、はるかに高くついてしまっていたのである

結論から見るとアホですね。
そりゃあ普通の仕事していても分かるけど保守ってのは大変。どうしたって最終的にはコストがかさむのは目に見えている。そして仕事はつまらん。
個人的にはそもそも、人の命に関わる物をそれも宇宙に行くような科学の最先端で使い命を預ける物を再利用しようとすること自体が信じられないけど。
再利用するにしても設計だけならまだしも、物理的に再利用するのが信じられない。

Oリングとは?

Oリングが事故の原因らしいが、この単語は子供の頃にも聞いた覚えがあるが、よく分かりません。
どうも調べてみと、燃料タンクの繋ぎ目があってその繋ぎ目が振動でずれると隙間ができ燃料が出てくるので、それを防ぐためのゴムらしい。
なんでこんな繋ぎ目があるのかがよくわからんが、構造上必要なのでしょう。


このゴム製のOリングは温度が低くなると硬くなって損傷しやすいと。
で、現実には冬にチャレンジャー号は発射することになる。おまけに打ち上げ延長の間に氷点下で冷えまくっていてかなりやばい状況だったと。
そして、現場の技術屋はやばいよー、って上に訴えるけど結局は無視されることになる。だってここで打ち上げ中止したらイメージ悪くなるし、金が金がー。
結局懸念通り事故が起きて何もかも終わり。

技術屋 vs 非エンジニア(特に経営層等の責任者)

経営陣の一人は「技術者の帽子を脱いで経営者の帽子をかぶれ」とまでいって経営を考えろ、NASA側も今まで問題はなかった、もっと根拠を出せ的な事まで言って打ち上げを強行している。
まあ、普通の開発現場でも良く見られる光景だ。泣きたくなってくるね。


問題は技術的な問題はすべての根本で無理を言ってもどうしようもないことだ。そしてそれを非エンジニアは理解しようとせず(しようにも専門的なので無理だけど)、そして常にお金を優先しようとする。
そりゃあ、非エンジニアにとって技術は所詮金稼ぎのツールに過ぎない。


でも俺達エンジニアにとっては技術こそがすべてでビジネスは技術の適応する1対象にすぎない。
だって、会社変わっても今まで学んだ技術を応用できるから。会社自体にビジネス自体にそこまで執着はしていないと思う。


そして、このチャレンジャー号の時のようにぶつかり、大抵エンジニアの声は無視される。問題が起きるまでは。
そして、問題をなんとか片付けたら性懲りもなく、またエンジニアの声を無視する。

原因

チャレンジャー号の事故の後、NASAでは幾つか顕著な改革がなされたが、多くの評論家はNASAの管理構造と組織文化における変化は深いものでも長続きするものでもないと評した。2003年にコロンビア号空中分解事故が発生した際、NASAによる安全上の問題への管理姿勢が改めて疑惑の的になった。コロンビア号事故調査委員会 (en:Columbia Accident Investigation Board, CAIB) はNASAはチャレンジャー号の教訓からほとんど何も学ばなかったと断定した。

http://ja.wikipedia.org/wiki/チャレンジャー号爆発事故

実際NASA上層部では意外にも安全を軽視していたとは誰も認識していなかったのである。
寧ろ、安全を重視したNASAの複雑な規則や手続きに基づいて意思決定をしたと考えられていた。

NASAには飛行管理者が技術者の上に立つ階級性が存在し、意思疎通を妨げる原因ともなっていた。
飛行管理者が安全であると主張する以上、技術者は不安を口にしにくい文化が存在する。
「沈黙の安全」と呼ばれるこの独特の風土は、チャレンジャー事故を調査した大統領委員会も指摘していた点であった。

大統領調査委員会、またはロジャース委員会の調査の中心的な調査議題は以下の2点であった:
何故NASAはチャレンジャー号打ち上げの何年も前から問題視されていたOリングの侵食問題を知りながらシャトルを飛ばし続けたのか。
また、チャレンジャー号打ち上げ前夜に、技術者らの不安をよそに、気温の低さは許容できる範囲のリスクであるとして打ち上げを決定したのか、ということであった。
一方、コロンビア号独立事故調査委員会による調査の中心的な議題と
は:どうしてNASAは打ち上げ時の断熱材による損傷があった事実を知りながら、問題の重大性を見抜くことができなかったのか、という問題である。
いずれもリスク要素を認識しながらも、問題に適切な応対を行わなかった点に共通性がある。

つまりNASA内部の視点で事故を振り返ってみることによって他メディアによる事故分析とは別の見解が見えてくる。
組織内部ではリスクがリスクとして認識されない環境が整っていたことがうかがわれる。

Oリング侵食問題と断熱材問題の2点は、打ち上げ前に行われるNASAのFlight Readiness Reviewにて毎回提出される議題となっていたが、
完全に解決された上で打ち上げが決定されることはなかった。毎回小さな修復などを行い、手遅れになるまで間に合わせでごまかしてきたのが事実である

http://fs1.law.keio.ac.jp/~kubo/seminar/kenkyu/sotsuron/sotsu13/15sueki.PDF


結局のところ、エンジニアよりも非エンジニアの経営陣が力があり、そして彼らは技術よりもお金に関心があること、なんだと思う。
チャレンジャー号の事故は高額倫理という分野で題材にされているらしいが、いくら科学、工学最先端の話とは言えが論理とかいう問題以前の話だと思う。


どう対応するのかは非常に難しいが、大きく2つにわかれると思う。

  • 問題が発生する前に彼らにもエンジニア的視線を持ってもらうということ。つまり教育だ。会社によっては非エンジニアでもはじめにプログラムの基礎から教えている会社もあると聞く。
  • 問題が発生したあと、もしくは問題が発生するのを予想できる場合、エンジニアは彼らをなんとしてでも説得する必要がある。出来るだけ具体的な数値をだして、そして分かりやすく。


うーん、難しい話だ。とくに自分のようなソフトウェア工学の世界だと見えづらいから余計に説明しづらい。
幸い今の会社はまだ、非エンジニアでも話はある程度聞いてくれる土壌がある。そしてエンジニアは色々挑戦させてもらえる会社だ。当然挑戦させてくれるということはそれだけ現状がアレな部分が多いのだけど。
この話を知ってすぐに世界が変わるわけでもないし、具体的にこうしたほうが良いという話でもない。でも前に進む時のヒントにはなると思う。
最近はもっと若い時に勉強しておけば良かったと思う毎日。でも少しづつでも前に進んでいると信じたい。

資料

最後にこんかい見たサイトのメモ


あとは"チャレンジャー号事故 倫理"あたりでぐぐったらいっぱい出てくるので興味があれば調べてみるといいかと。

追記

そうそう、乗組員の死因ですが...

分解直後、少なくとも一部の飛行士は生存しまだ意識があったものと考えられる。

死因は特定できない。乗員区画が海面に激突した際の衝撃が非常に激しかったため、シャトルが分解した直後の数秒間に生じた被害の証拠は覆い隠されてしまった。我々の最終的な結論は以下の通り:

チャレンジャー号の乗員の死因は特定できない。
機体が分解した際に乗員が受けた衝撃では、恐らく死亡や重傷には至らなかった。
確実ではないが、飛行士たちは、機体が分解してから数秒以内に乗員区画の減圧により意識を失った可能性がある

これに対してNASAの主任調査官であるロバート・オーバーマイヤー(英語版)など一部の専門家は、全員と言わずともほとんどの乗員は海面に激突するまでの落下中ずっと生存し意識があっただろうと信じている


最悪爆発から海に衝突するまで意識があったかもしれないらしい。痛ましい...